HIV/AIDSの話と性教育

昨日の続きで、展示の原稿です。
これまでブログに書いたことと重なるところもあります。


【HIV/AIDSの話】

ガーナのHIV陽性率は1.37%(2012 Sentinel Survey (HSS) and National Prevalence and Estimates)で、
アフリカの中では低く、新規感染者数は年々低下している傾向です。
JICAボランティアでも、現在エイズ対策隊員のみでは募集されなくなっているほどです。

テレビの国営放送では、HIV陽性者がカミングアウトして出演している番組
を時々見かけますが、
一方で、HIV陽性者が比較的少ないがゆえに正しい知識を得られない人々が多く、
差別やスティグマ、エイズ孤児の問題は深刻です。
「近寄るだけでHIVが感染する」と、見捨てられるケースもあります。

HIV検査は少量の血液や唾液で簡単に測れるのですが、
進んで検査を受ける人は多くありません。

ガーナ人は結構保守的なので、先入観に囚われない行動をとることは
なかなか難しそうです。


私は地元のラジオに6回出演させてもらい、そのうちの1回HIV/AIDSの話をしました。
内容は、
「いつもコンドームを使いましょう」
「HIV検査を受けましょう」
「パートナーに対して誠実でいましょう」
「HIV陽性者を孤立させず、大事にしましょう」
「HIVの感染経路をおじさんが質問して、私が答える」
「リスナーからの質問におじさんが答える」

放送後に「ラジオ聴いた」と声をかけてくれる人がいました。
家の中や乗り合いバス、食堂、サロンでたまたま流れるラジオから、
外国人がたどたどしい英語と現地語で
「We should not abandon People Living with HIV/AIDS.
We should show them love and kindness.」
などと話すのを聴いて、少しでも印象に残ったらいいなと思います。


オフィスにあるクリニックでは、HIV陽性者サポート団体が陽性者を対象とした
ワークショップを時々開いていて、
治療にかかるお金の話、保険の話、仕事の話、CD4カウントの話、各州の感染者数の話
などをしています。
また、HIV/AIDSへの予算削減によりARV薬が不足していた時には、
服薬の仕方を確認し合って、陽性者の不安を和らげる努力をしていました。

私もワークショップに参加して、日和見感染予防と栄養の話をさせてもらうことがあります。
食べるときは不潔な手と不潔なお皿を避けて、なるべく加熱したものを食べましょうと伝え、
好きな食べ物や、栄養のある食べ物は何ですか?どんな風に食べていますか?
と参加者に質問していき、私も好きな現地食を挙げていきます。

ガーナ人は食べ物の話が好きなので必ず盛り上がりますが、
いざ食べ物を前にすると思うように食べられないこともあると思うので、
食事内容よりも食べやすくする工夫をそれぞれ共有し合うことが大事だと思います。

ガーナ人陽性者達は
休息(疲れたら休む)、
ストレス発散(話す、歌う、踊る、笑う、心配しない)が得意で、
ワークショップでは私もエネルギーをもらっています。


【性教育】

木で出来た模型を使って、コンドームの付け方、子宮へのIUDの挿入方法、
性感染症の症状を説明します。

学校によっては性教育をほとんどやらない所もありますが、
小学校1年生からする所もあります。
同じ小学1年生でも経済的な事情で年齢が高い子もいて、
その子達に合わせて教育されるそうです。

ガーナはキリスト教徒が多いのですが、10代でも妊娠・出産するケースが多く、
日本に比べると性について家庭内でオープンに話されているようです。

学校では、妊娠するしくみ、性感染症の感染経路、感染が分かった場合にどうすれば良いかを教えています。


日本では避妊といえばコンドームかピルが主流ですが、
ガーナでは避妊といえば女性のホルモン注射、インプラント、IUDです。
10代の子からやっています。

ホルモン注射は、3か月に1回皮下注射することでピルを飲んでいる状態と同様に
女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の血中濃度を高く保ち、
避妊効果を発揮します。

インプラントは、上腕の内側に2本のチューブを埋め込んで、こちらも
女性ホルモンの血中濃度を高く保ち、1回埋め込むと5年間も効果が続きます。
その間、月経の回数はかなり減るそうです。
時々めまいや体重減少などの副作用があり、5年経っていなくても
チューブを抜きに来る人もいます。

IUDは日本でも行われていますが、
子宮内に器具を入れて受精卵の子宮内膜への着床を防ぐもので、
10〜12年間避妊効果が続きます。

なぜこれらがポピュラーなのかというと、
コンドームやピルのように忘れることがなく、面倒もなく、
何といっても安いからです。

国民健康保険は使えませんが、先進国からの援助によってとても安く、
ホルモン注射もインプラントもIUDも、1回の施術当たり100円程しかかかりません。
コンドームはクリニックで買えば1個1円程、ピルは3か月分100円程なのですが、
それらよりもさらに安い値段なのです。

このように避妊方法がいろいろあり、女性が自分で選択して家族計画できる反面、
「パートナーと話し合う」という一番大切なことができていないカップルが多いことや、
男性があまりコンドームを付けず、クラミジアや淋病、梅毒、HIVなどの性感染症予防も
できていないことが問題です。
「コンドームが一番体に優しいよ」と伝えていくしかないのですが。


よく見たらヤラしい!人文字の看板。
作者は誰なんだろ。採用されたのもすごい。
(写真は友人が6年前ガーナ旅行した時に撮ったもの)